▼定義
脳死とは,大脳半球全般および脳幹(中脳,橋,延髄)を含む脳全体の機能が不可逆的に停止した全脳死の状態のことである.
▼病態
大脳は主に思考,運動,感覚などの神経機能の中枢であり,脳幹は呼吸や循環の生命活動を担っている.さらに,脳幹には視床から大脳皮質に及ぶ上行性網様体賦活系があり意識の覚醒状態を維持している.脳死状態では自発呼吸はなく,人工呼吸管理下でなければ呼吸循環を維持できない.脳死と心臓死との間には時間的ズレが生じるが,脳死になると短期間のうちに心停止,呼吸停止,瞳孔散大(死の三徴)を呈する.これに対して,大脳死は大脳機能が広範に障害されているが脳幹機能はあまり障害されていない状態であり,自発呼吸はある.いわゆる植物状態である.脳幹死は脳幹機能のみが障害されているが大脳機能は廃絶していない状態であり,昏睡状態で自発呼吸は停止しているが脳波活動は認められる.脳死の主な原因には,脳