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1 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症
infection caused by carbapenem-resistant Enterobacteriaceae(CRE)
松本 哲哉
(国際医療福祉大学主任教授・感染症学)

▼定義

‍ カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae:CRE)はカルバペネムに耐性を示す腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌の総称である.腸内細菌科の菌としては20数種の属の菌が含まれるが,CREの特徴を有する菌としては大腸菌や肺炎桿菌などが代表的であり,さらにEnterobacter(エンテロバクター)属,Citrobacter(シトロバクター)属,Proteus(プロテウス)属,Serratia(セラチア)属などの菌が挙げられる.

 CREは基本的にカルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼを産生することで,カルバペネムに耐性を示す.カルバペネマーゼは大きくβ-ラクタマーゼの分類のなかでClass A,B,およびDの3つのタイプがある(図11-15).カルバペネマーゼの種類は国や地域によっても異なり,日本で多くみられるのはIMP型であり,米国ではKPC型,インドではNDM型,中東や欧州ではOXA-48型などが多いが,海外では複数の種類が混在して分離されている.

 なお,カルバペネマーゼを産生しなくても薬剤透過性の低下や菌体外への薬剤の排出などの耐性機序によりカルバペネムに耐性を示す菌株がある.すなわちCREはカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(carbapenemase-producing Enterobacteriaceae:CPE)と一部重複するものの,耐性機序としては異なるカテゴリーを有する(図11-16).カルバペネマーゼの遺伝子はプラスミドにコードされている場合が多く,接合伝達によってほかの菌にプラスミドを伝播し耐性を誘導させることができる.

▼病態

 CREは高度な耐性を有するが,腸内細菌科の細菌として腸管内などに保有しているだけでは無症状である.ただし,腸管外の臓器に侵入し

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