診療支援
治療

22 ネコ引っ搔き病
cat scratch disease(CSD)
青木 洋介
(佐賀大学教授・国際医療学講座(臨床感染症学分野))

▼疫学

 グラム陰性桿菌であるBartonella henselaeによる感染症.本菌を有するネコあるいはネコに外寄生するノミなどの節足動物により媒介される.子ネコはヒトを引っ搔くことが多いため飼育に際し注意を要する.発症疫学に地域性はない.

▼病態

 典型例ではネコの引っ搔きや咬傷を受けた部位に数日前後で紅斑あるいは膿疹を生じる.その1~3週間後に受傷部の所属リンパ節の著明な腫大と圧痛を認め,30~60%の患者では中等度の発熱を伴う.この時期の受診が多いが,前述の皮膚病変の確認やペット飼育歴に関する問診が重要である(ネコ飼育歴がない患者も少なくない).リンパ節は頸部,鎖骨上窩,腋窩,内側上顆,鼠径部がおかされることが多く,数cm以上にまでなりうる.いずれもほとんどは単一のリンパ節病変であるが,時に複数部位に病変を認め,10数%の患者では排膿を認める.結膜から菌が侵入すると,眼腺感染症(oculoglandular infection)として結膜炎および耳前から耳下にかけてリンパ節腫脹を認める〔Parinaud(パリノー)症候群〕.

 まれに,神経網膜炎や視神経炎,脈絡膜炎などの眼病変や,易刺激性やけいれんなどの脳症あるいは脳神経の異常を一過性に認めることもある.培養陰性心内膜炎を呈することがあり,認識しておくことが必要である.

 本感染症は細胞性免疫と好中球反応による感染免疫を惹起するため,病態は上記のように限局される.HIV感染など,免疫不全がある場合には,肝脾肉芽腫や菌血症などの全身播種,あるいは細菌性血管腫症(bacillary angiomatosis)を合併する.

▼診断

 Gram(グラム)染色性は非常に弱いため,Warthin-Starry(ウォーシン-スタリー)銀染色を施行することが推奨される.寒天培地上での発育が遅いため,本症を疑った場合は培養を3週間継続する.PCR

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