▼疫学
グラム陰性桿菌であるBartonella henselaeによる感染症.本菌を有するネコあるいはネコに外寄生するノミなどの節足動物により媒介される.子ネコはヒトを引っ搔くことが多いため飼育に際し注意を要する.発症疫学に地域性はない.
▼病態
典型例ではネコの引っ搔きや咬傷を受けた部位に数日前後で紅斑あるいは膿疹を生じる.その1~3週間後に受傷部の所属リンパ節の著明な腫大と圧痛を認め,30~60%の患者では中等度の発熱を伴う.この時期の受診が多いが,前述の皮膚病変の確認やペット飼育歴に関する問診が重要である(ネコ飼育歴がない患者も少なくない).リンパ節は頸部,鎖骨上窩,腋窩,内側上顆,鼠径部がおかされることが多く,数cm以上にまでなりうる.いずれもほとんどは単一のリンパ節病変であるが,時に複数部位に病変を認め,10数%の患者では排膿を認める.結膜から菌が侵入すると,眼腺感染症(oculoglandular infection)として結膜炎および耳前から耳下にかけてリンパ節腫脹を認める〔Parinaud(パリノー)症候群〕.
まれに,神経網膜炎や視神経炎,脈絡膜炎などの眼病変や,易刺激性やけいれんなどの脳症あるいは脳神経の異常を一過性に認めることもある.培養陰性心内膜炎を呈することがあり,認識しておくことが必要である.
本感染症は細胞性免疫と好中球反応による感染免疫を惹起するため,病態は上記のように限局される.HIV感染など,免疫不全がある場合には,肝脾肉芽腫や菌血症などの全身播種,あるいは細菌性血管腫症(bacillary angiomatosis)を合併する.
▼診断
Gram(グラム)染色性は非常に弱いため,Warthin-Starry(ウォーシン-スタリー)銀染色を施行することが推奨される.寒天培地上での発育が遅いため,本症を疑った場合は培養を3週間継続する.PCR
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/アジスロマイシン水和物《ジスロマック》
- 治療薬マニュアル2024/リファンピシン《リファジン》
- 治療薬マニュアル2024/シプロフロキサシン塩酸塩《シプロキサン》
- 治療薬マニュアル2024/シプロフロキサシン《シプロキサン》
- 今日の治療指針2023年版/動物より伝播される感染症(特にイヌ,ネコ,ウサギ,ネズミに咬まれたとき) [■その他]
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/8 開発途上国からの帰国後発熱
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/癤(せつ),癤腫症,癰(よう)
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/ネコひっかき病
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/放線菌症
- 臨床検査データブック 2023-2024/単純ヘルペスウイルス抗原定性〔HSV抗原定性〕(性器) [保] 210点
- 新臨床内科学 第10版/21 軟性下疳
- 今日の診断指針 第8版/流行性耳下腺炎
- 新臨床内科学 第10版/1 ジフテリア
- 今日の診断指針 第8版/癤(せつ)・癰(よう)・癤腫症
- 新臨床内科学 第10版/21 伝染性軟属腫
- 今日の小児治療指針 第17版/猫ひっかき病