▼疫学
汚水などの環境中に広く棲息するグラム陽性桿菌であるTropheryma Whippleiによる全身感染症であり,臓器を限定しない,年余にわたる慢性感染症.頻度が低いまれな疾患であるため診断に至らないことが多い.白人男性での報告が多い.
▼病態
小~中関節の関節痛(炎)が先行することが多く,その後,年単位の経過で体重減少,下痢(吸収不良症候群を伴う),腹痛が出現する頻度が高い(70~100%).全身性浮腫,リンパ節腫大,貧血,咳嗽,胸水などの多彩な症状も認める.眼筋麻痺や記憶障害などの神経学的異常を認めることもある.
病型としては,①一過性WD(小児下痢症),②無症候性WD(糞便中のキャリア),③限局性WD(全身症状を伴わない心内膜炎,あるいは中枢神経症状),④古典的WD(全身症状を呈する),⑤免疫抑制性WD(TNF-α阻害薬による治療やHIV感染症を契機としてWDを発症する)に分類されている.
自己免疫性疾患と判断されステロイド治療を受ける患者が多い.いったんは改善を認めるが,基本的な治療ではないため再燃する.
▼診断
上記の臨床像を呈する患者に十二指腸の粘膜固有層を含む生検を施行し,リンパ管拡張およびPAS染色陽性に染まるマクロファージの集簇を認めれば,WDである可能性が高い.この後,免疫組織染色や組織検体の遺伝子学的検査でT. whippleiの16SrRNAが陽性であれば診断が確定する.研究レベルでの手技以外,臨床検査で実施できる培養法はない.
▼治療・予後
第3世代セファロスポリン系抗菌薬であるセフトリアキソン2g/日による治療を2~4週間継続する.下痢や発熱はすみやかに改善することが多いが,関節炎,その他の症状の改善には時間を要することが多い.セフトリアキソンの治療後は,ST合剤薬〔スルファメトキサゾール(400mg)/トリメトプリム(80mg)合剤〕1日2回内
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