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治療

21 伝染性軟属腫
molluscum contagiosum
照屋 勝治
(国立国際医療研究センター・エイズ治療・研究開発センター・ACC科医長)

▼定義

 ポックスウイルス科モルシポックスウイルス属伝染性軟属腫ウイルスによる感染症である.感染力は強く,病変部皮膚との直接接触,タオル・スポンジなどを介した間接接触はもちろん,プールやお風呂の水を介した感染も起こりうると考えられている.移行抗体が消失した就学前の小児に好発し,特にアトピー性皮膚炎など皮膚バリア機能が低下している場合に感染・発症しやすい.成人では性感染症として,外陰部に発症することが多い(性器伝染性軟属腫).潜伏期は2週から2か月程度である.細胞性免疫が低下すると重症化しやすく,ステロイド使用者やHIV感染者では病変が広範囲かつ巨大となりやすい.特に成人の重症例で,陰部ではなく顔面や頸部に多発するような症例では積極的にHIV感染症の可能性を考える

▼疫学

 血清を用いた疫学検討では本ウイルスの抗体保有率は50歳以上の4割に達している.本ウイルス感染は皮膚に限局するため免疫刺激が弱く,伝染性軟属腫の発症者でも血清抗体の陽性率は8割程度であることが知られているため,かなりのヒトが不顕性感染を起こしていると推測されている.

▼診断

 2~5mm大の表面平滑の腫瘤で,中央部のくぼんだ中心臍窩のある特徴的形態から臨床的に診断可能である.病変部周囲への自家感染により,複数の病変が集簇していることが多い.ピンセットでつまむことで乳白色の内容物が圧出できる.手掌,足底を除くすべての皮膚面で発症しうるが,小児の好発部位は顔面,体幹,腋窩,腕,足であり,性器伝染性軟属腫では外陰部,肛門周囲などの陰毛生育部を中心に多発する.

▼治療

 自然治癒傾向が強く,1~3年の経過で自然消退するので,基本的に積極的治療は不要である.ただし,ステロイド使用やHIV感染者などの免疫不全例では難治化,重症化が起こりうる.積極的治療の適応は重症例や美容上の問題,そして他者への感染率の高い性器伝染性軟属腫である.

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