抗菌薬は,その起源の多くが細菌や真菌が産生する物質であったことから,従来,抗生物質といわれていた.現在では,ニューキノロン系薬のように化学合成される抗菌性物質(化学療法剤)も多くを占めるようになったことから,抗菌薬と総称されている.
➊β-ラクタム系薬
本系統は,β-ラクタム環を基本骨格に有する薬剤であり,ペニシリン系とセファロスポリン系に大別される.
古典的ペニシリンであるペニシリンGのほか抗菌スペクトルをグラム陰性菌(緑膿菌を除く)にまで拡大したアンピシリンやアモキシシリン薬と緑膿菌にも抗菌力を示すピペラシリンなどが実用化されている.その後,ペニシリナーゼと結合し,その作用を抑えるβ-ラクタマーゼ阻害薬としてクラブラン酸やスルバクタムをそれぞれアモキシシリン,アンピシリンに結合させた合剤が臨床使用されている.
一方,β-ラクタム環に隣接する結合基の違いによるセファロスポリン系と,種類は少ないもののセファマイシン系,オキサセフェム系がある.
セファロスポリン系薬は,その特性により第1~4世代に大別される.第1世代は,注射薬のセファゾリンと経口薬のセファクロル薬が代表である.第2世代はグラム陰性桿菌にも抗菌スペクトルを広げ,その代表薬がセフォチアム薬である.セファマイシン系薬のセフメタゾールなどはβ-ラクタマーゼ安定性が強化されておりESBL産生菌に抗菌力を示す.第3世代の薬剤はグラム陰性菌に対する抗菌力が強い.注射薬のセフトリアキソン,セフォペラゾンや経口薬のセフジトレン ピボキシル薬,セフポドキシムプロキセチル薬が代表薬として含まれる.これらの多くは,黄色ブドウ球菌に対する抗菌力が第1世代より弱いものや事実上グラム陽性菌全般に抗菌力の期待できない薬剤がある.このほか,側鎖構造の改良により抗緑膿菌活性を獲得したセフタジジムがある.第4世代は,グラム陽性菌に対する抗菌力を回
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