診療支援
治療

腸管出血性大腸菌
enterohemorrhagic E. coli(EHEC)
角田 隆文
(菊名記念病院・総合診療科)

●EHECは食中毒型に感染する場合と,糞口感染による接触感染がある.ごく少量の菌量で感染が成立するため,非常に感染力が強い.このため二次感染,三次感染が起こり,感染拡大が起こる.発症前には菌排泄は少ないが,発症後の排菌は爆発的に増加する.

●腸管出血性大腸菌感染症は三類感染症であり,全数届出の対象である.年間3,000~4,000人の患者が報告されている.このうち血清型ではO157が最も多く,O26,O111,O121が続く.2000年以降,O111集団事例の報告が増えている.

●1996年に大阪府堺市で小学生を中心に集団事例が発生し,1年間で全国から17,877人の患者が報告され,死亡例は12人であった.

●2011年焼き肉チェーン店での広域集団事例では和牛ユッケが原因食とされO111:H8およびO157:H7が検出された.O111陽性例85人のうち5人が亡くなり,2012年に食品衛生法が改正され,レバー生食が禁止され,生肉を提供するためには1cm以上のトリミングを必須とし,厳しい調理基準を設けたため,事実上,牛生肉の提供はできなくなった.

●水質汚染,土壌汚染が依然として続いており,生肉摂取がなくなったあとも,2014年の冷やしキュウリや2016年のキュウリのゆかり和えなどの集団事例が発生し,前者で患者数510人,後者では患者数84人に死者10人を数えた.

●わが国の2007年11月~2008年3月に全国の肉用牛406農場,2,436頭を対象にO157およびO26の保有状況を調査したところ,約3割の農場から検出された.2011年に25農場×10頭のサンプル調査を行ったところ,7農場,計14頭からO157が検出された.1か所のと畜場に搬入された96頭の牛のO157保有状況は20頭,約21%であった.

●2011年ドイツ国内だけで患者3,842人,HUS 855人,死者53人に及ぶ大規

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