診療支援
治療

【2】アレルゲン免疫療法
allergen immunotherapy(AIT)
谷口 正実
(湘南鎌倉総合病院免疫・アレルギーセンター・センター長)

▼定義

 IgE抗体が関与するⅠ型アレルギーによる気道疾患(花粉症やアレルギー性喘息など)に対して,希釈した原因アレルゲンを数年以上継続投与することにより,アレルゲン曝露により誘発される気道その他の関連症状を緩和する治療法.従来はアレルゲン特異的免疫療法や減感作療法ともよばれたが,現在では,アレルゲン免疫療法で国際的に統一されている.通常は,花粉やダニアレルゲンなどの吸入アレルゲンエキスを用いた治療法を指すが,ハチ毒アナフィラキシーや一部の職業性アレルギーに対する治療もAITに含まれる.以前によく用いられた減感作療法という用語は,現在では薬剤アレルギーに対して少量ずつ漸増投与する治療法のみを指す.また,食物アレルギーに対して原因食物を少量ずつ毎日摂取する経口免疫療法は,通常はAITに含まないことが多い.

▼歴史

 皮下注射法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)として英国のNoonが1911年に花粉アレルギー患者に花粉エキスを用いて初めて試み,その有効性を報告した.以後,家塵ダニや各種花粉,ハチ毒,職業性アレルゲンなどで臨床応用され,いずれも効果をあげている.現在では,100年以上が経過し,通常の薬剤治療と異なり,アレルギー疾患の自然経過を変え,一部で寛解をもたらす治療法として評価され,欧米を中心にアレルギー医療の現場で広く行われている.近年では,SCITよりも,舌下免疫法(sublingual immunotherapy:SLIT)の製剤が開発されたことにより,SLITが主流になりつつある.

▼意義

‍ AITは,アレルギー疾患の自然経過を修飾できる唯一の治療である.通常の薬物治療では,その中止とともに,症状や炎症の再燃が生じるため,寛解や根治につながる治療とはいえない.一方,AITでは臨床症状の改善だけでなく,中止後も寛解を認めることや,新規のアレルゲ

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