診療支援
治療

1 アナフィラキシー
anaphylaxis
山口 正雄
(帝京大学教授・呼吸器・アレルギー学)

疾患を疑うポイント

●あらゆる年齢で発症しうるが,特に多い年代は小児,多い原因は食物.

●全身性に急速に症状が進行するが,特に頻度の高い皮膚症状に着目し,生命に直結する循環器,呼吸器症状を把握し診断・治療を行う.皮膚症状が先に生じるとは限らない.

●この疾患の可能性を考えたら,ただちにアドレナリン筋注(成人での投与量は0.3mg)を準備し,診断したら筋注を行う.

学びのポイント

●予期せぬ発症が特徴であり,発症すると秒~分の単位で症状が進行する.診断と治療(特にアドレナリン筋注)について最低限のことは頭に入れておくべきである.臨床現場で患者を前にしてアナフィラキシーの初期治療を調べる暇がないことを肝に銘じておく.

●第一選択薬はアドレナリン筋注,成人量は0.3mgであることを覚えておく.

●食物や薬物を摂取してただちに発症することが多いが,運動と組み合わさって発症する病型もある.

▼定義

 アレルゲンなどの侵入により,複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され,生命に危険を与えうる過敏反応である.アナフィラキシーショックは,アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合,と定義されている.

▼病態

 基本の病態は,過去に複数回曝露されて感作が成立している個体において,アレルゲンが侵入してマスト(肥満)細胞および好塩基球の表面でIgE架橋反応が起こり,これらの細胞が刺激されてヒスタミンをはじめとする種々のメディエーターが放出されて全身の症状を引き起こすというものである.

 マスト細胞はロイコトリエンや血小板活性化因子(platelet activating factor:PAF)などの脂質メディエーター,サイトカインも放出し,これらの因子が症状を悪化させるとともに,数時間をかけて好酸球,好塩基球,Th2リンパ球を臓器に集積させアレルギー性炎症を再燃させる(I型アレルギー反応の遅発相).

 なお,ア

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