診療支援
治療

2 薬剤アレルギー
drug allergy
千貫 祐子
(島根大学講師・皮膚科)

疾患を疑うポイント

●新規薬剤の投与開始後,通常1~2週間で発疹が出現.

●交差反応で発症する場合は,初回投与時でも症状が出現しうる.

学びのポイント

●薬剤やその代謝産物により誘発される皮膚・粘膜の発疹の総称を薬疹といい,さまざまな発疹形態で発症しうる.

●アレルギー性の薬疹は,Ⅰ~Ⅳ型のすべての機序で発症しうる.

●発症機序が明確でない場合も多いが,じん麻疹・アナフィラキシー型薬疹,SJS,TEN,DIHSは致命的となりうるため,注意を要する.

▼定義

 体内に摂取された薬剤,あるいはその代謝産物によって,皮膚や粘膜に発疹をきたすようになったものを薬疹とよぶ.重症化すると全身倦怠感,発熱,リンパ節腫脹,肝腎機能障害などを伴うことがあり,ショックをきたすこともある.

▼病態

 薬疹は,発症機序からアレルギー性と非アレルギー性に大別されるが,発症機序が明確でない場合もある.アレルギー性の薬疹では,薬剤自体,あるいは薬剤がハプテンとして血清蛋白などと結合した薬剤複合体が抗原性を獲得し,免疫学的な機序を介して発症すると考えられる.Ⅰ~Ⅳ型アレルギーのほか,制御性T細胞(Treg)が関与する機序なども考えられている.

▼疫学

‍ アナフィラキシー型薬疹の発症率は定かではないが,本邦におけるアナフィラキシーショックの発症は年間5,000~6,000例といわれており,毎年20~30人が薬剤性のアナフィラキシーショックで死亡している.

 また,Stevens-Johnson(スティーヴンス-ジョンソン)症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)と中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)を合わせた重症多形滲出性紅斑全体では,年間人口100万人あたり1~10人程度が発症すると推定されている.2005~2007年の本邦の調査では,重症薬疹による死亡率はS

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?