診療支援
治療

4 血清病
serum sickness
中島 裕史
(千葉大学大学院教授・アレルギー・臨床免疫学)

疾患を疑うポイント

●発熱,皮疹(じん麻疹),関節痛,筋肉痛,リンパ節腫脹がみられる.

●異種血清,あるいは薬剤投与後1~2週で上記症状が出現する.

学びのポイント

●血清病は,異種血清の投与により形成された免疫複合体の組織沈着により発熱,皮疹,関節痛,リンパ節腫脹などが生じる病態である.

●類似の病態は,ハチ毒,感染,ワクチン,薬剤などによっても生じ,血清病様反応とよばれる.

●異種血清治療の減少により古典的血清病は比較的まれとなったが,抗胸腺細胞グロブリンや抗体製剤に起因する血清病は散見される.

●SLE,成人Still病,ウイルス感染症,過敏性血管炎,薬剤性過敏症症候群(DIHS),反応性関節炎などと鑑別が必要である.

●異種血清の投与や原因薬剤を中止することにより症状は自然に改善し,予後は良好であるが,重症例ではステロイド治療が必要となる.

▼定義

 血清病は,異種血清投与1~2週後に形成された免疫複合体(immune complex:IC)の組織沈着により皮疹,発熱,関節痛,リンパ節腫脹などを生じる病態としてvon Pirquet(ピルケ)とSchick(シック)により提唱された疾患概念である.

 類似の病態は,ハチ毒などの異種蛋白の曝露,細菌やウイルス感染症,ワクチン,薬剤が原因で生じることが知られており,血清病様反応とよばれる.

▼病態

 血清病は,異種蛋白などの抗原に対し抗体が産生され,その結果形成されたICが血管壁や腎糸球体などに沈着して組織傷害を引き起こすGell & Coombs分類Ⅲ型のアレルギー反応である(図12-9)

 ICの組織傷害性は,ICを構成する抗体のサブクラスに依存し,古典的経路で補体を活性化するIgG1,IgG2,IgG3,IgMは,補体を活性化しないIgG4より組織傷害性が強い.ICの組織傷害性は,ICの大きさにも影響を受け,抗原過剰域で形成される中等大の

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?