診療支援
治療

5 昆虫アレルギー
insect allergy
平田 博国
(獨協医科大学埼玉医療センター・呼吸器・アレルギー内科准教授)

疾患を疑うポイント

●昆虫の刺咬や接触により30分以内に,全身皮膚症状,血管性浮腫,呼吸器症状,循環器症状のいずれかが認められた場合,昆虫アレルゲンによるアナフィラキシーを疑う.

●喘息やアレルギー性鼻炎の患者のなかで,吸入による昆虫アレルギーを呈する症例がある.

学びのポイント

●昆虫アレルギーの分類として,刺咬や接触では全身アナフィラキシーを,吸入では喘息や鼻炎を発症する.

●診断には,問診と視診(刺咬部位や毒針などの確認)が重要である.皮膚テストや特異的IgE抗体の測定は補助的診断として用いる.

●ハチ刺傷によるアナフィラキシーショックの再発予防の対策として,アドレナリン自己注射薬(エピペン)を携帯させる.

▼定義

 昆虫は通常4枚の翅と6本の足を有し,節足動物門昆虫網に属する動物である.昆虫アレルギーは,①刺傷(ハチ,蚊,蟻など),②吸入(ユスリカ,蛾,ゴキブリ),③接触(毒蛾や毛虫など)により発症する.ダニは重要なアレルゲンであるが,8本足であり昆虫には属さない.昆虫アレルギーのなかで,ハチや蟻刺傷により死亡することがある.

▼病態

 昆虫アレルゲンに対する特異的IgE抗体を介した即時型アレルギー反応と,IgE抗体を介さずに毒素直接作用(外因性ヒスタミンなどの化学伝達物質)による反応がある.狭義では,前者をアナフィラキシー反応,後者をアナフィラキシー様反応とよぶ.広義では,両者をアナフィラキシーとよび,発症の多くは即時型アレルギー反応である.即時型アレルギー反応の発症機序として,初回,昆虫アレルゲンに曝露され特異的IgE抗体が産生される.2回目以降に,同昆虫アレルゲンに再度曝露され,抗原抗体反応が惹起され,アレルギーを発症する.

▼疫学

 わが国の昆虫アレルギーにおいて,ハチ刺傷による死亡例が最も多く,毎年20名前後と報告されている.成人の男性に多く,小児の死亡例はまれである.アナフィ

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