診療支援
治療

5 口腔アレルギー症候群,花粉-食物アレルギー症候群
oral allergy syndrome(OAS),pollen-food allergy syndrome(PFAS)
矢上 晶子
(藤田医科大学ばんたね病院・総合アレルギー科教授)

疾患を疑うポイント

●食物摂取後に口腔内にかゆみなどの過敏反応を生じる.

●1人の患者が複数の野菜や果物により症状が誘発され,花粉症が先行する.

学びのポイント

●口腔アレルギー症候群の多くは,花粉症と野菜や果物との交差反応に基づく花粉-食物アレルギーである.

●抗原間の交差反応性に基づくため,臨床的な特徴としては,1人の患者が複数の食材に反応することが挙げられる.

●花粉症の発症後に野菜や果物を摂取することで口腔内のかゆみを自覚するようになる.

●時にアナフィラキシーショックなど重篤な症状が誘発されることがある.

▼定義

 従来のOASは口腔粘膜主体の症状からアレルギー症状が始まり,時に全身に波及していくことと定義される.これには,甲殻類や,魚や卵なども含まれ,免疫学的機序(IgEを介する反応)だけでなく,非免疫学的機序(食品からのヒスタミン様物質に対する反応)も含まれていた.その後,IgEを介した花粉症との交差反応によるものを花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)とよぶようになった.

▼病態

 PFASでは,アレルギーの感作の成立段階と症状の誘発段階に別々の蛋白質抗原が関与している.まず,花粉抗原を吸入することで感作が成立し,その後,交差反応性抗原を有する野菜や果物を摂取した際に口腔内などに過敏反応が誘発される.それらの抗原は加熱や酵素処理などにより消化されやすいことから症状が口腔内に限局するとされる.

▼症状

 食物を摂取した直後から1時間以内に,口唇・舌・口腔粘膜・咽頭のかゆみや閉塞感を自覚する.時に,鼻や眼の症状を伴うことがある.食材(抗原)によりアナフィラキシーショックが誘発されることもある.

▼交差反応性抗原

 PFASには,多くの場合,植物の生体防御にかかわる感染特異的蛋白質(pathogenesis-related protei

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?