診療支援
治療

7 多発血管炎性肉芽腫症
granulomatosis with polyangiitis(GPA)
多賀谷 悦子
(東京女子医科大学教授・呼吸器内科学)

疾患を疑うポイント

●血管炎を伴った壊死性肉芽腫により,上気道,肺,腎に症状が認められる進行性の疾患である.難病の特定疾患に指定されている.

学びのポイント

●上気道→肺→腎の順番で発症することが多い.

●好中球細胞質抗体ANCAのPR3-ANCAの関与が考えられている.

●胸部X線線画像およびCT画像で,多発性結節影,空洞を伴うことが多く,肺癌や肺結核と鑑別を要する.

▼定義

 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は,以前にはWegener(ウェゲナー)肉芽腫症と称されていた疾患で,Chapel Hillコンセンサス会議2012により,GPAに変更された.ANCA関連血管炎であり,①全身の小~中血管の壊死性肉芽腫血管炎,②上気道と肺の壊死性肉芽腫血管炎,③半月体形成腎炎を三徴とする.本疾患は厚生労働省の難病に指定されている.

▼病態

 原因は不明.上気道感染や細菌感染により,発症したり再発したりすることが多い.好中球細胞質に対する自己抗体であるPR3-ANCAの関与が指摘されている.PR3-ANCAは上気道感染により産生された炎症性サイトカインなどとともに,好中球を活性化し,血管内皮傷害や肉芽腫が形成される機序が考えられている.

▼疫学

 男性は30~60歳代,女性は50~60歳代に好発する.最近の方向では,やや女性に多い.わが国では,約2,400人が申請をしている.

▼症状

 発熱,全身倦怠感,体重減少など全身症状と,9割の患者は上気道または下気道症状で発症する.通常は,下記①~③の順番で起こる.

①上気道症状:膿性鼻漏,鼻出血,鞍鼻,中耳炎,嗄声,咽喉頭潰瘍など.

②下気道症状:血痰,咳嗽,呼吸困難.

③腎臓の症状:蛋白尿,血尿,浮腫,急速進行性糸球体腎炎.

④その他:紫斑,多発神経炎,多発関節痛,眼窩に病変が及ぶと眼球突出,眼痛,視力低下などがみられるようになる.

 ①~③のすべての症状が揃っている全身型と

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