診療支援
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アレルギー疾患を理解するためのポイント
永田 真
(埼玉医科大学教授・呼吸器内科/アレルギーセンター長)

ざっくりわかるアレルギー疾患

A アレルギー疾患の基本的な特徴とは?

 アレルギー疾患は,アトピー体質とよばれる素因を基盤として発症します.体質的要素が基礎にあるため,治癒しがたい特徴があります.しばしば若年期から発症し,そして生涯にわたり患者さんを苦しめるのです.例えば小児喘息で一時寛解(アウトグロウ)を経験した患者さんでも,成人で再発して慢性化し,しかも当初は純粋なダニアレルギー性喘息であったものが,再発後では各種花粉類や真菌類など,感作アレルゲンが拡大していく,ということがごく日常的に経験されます.

 もう1点重要なのは,1人の患者さんが同一の病因アレルゲンにより複数の疾患を表現することです.例えば室内塵中のダニ(家塵ダニ)が病因アレルゲンの場合について示します.小児喘息では90%以上,成人喘息でも半数以上はダニに対するIgE抗体産生を示します.アレルギー性鼻炎・結膜炎においても通年性の場合には,最も一般的かつ重要な病因アレルゲンはダニです.またアトピー性皮膚炎でも,ダニはしばしば重要な病因アレルゲンとなっています.さらに食物アレルギーの特殊型として,お好み焼き粉やパンケーキ粉などに混入し増殖したダニがアナフィラキシーなどを起こすパンケーキ症候群とよばれる病態をも起こします(図12-1)

 すなわちアレルギー疾患については基本的に生涯というスパンでみわたす必要がありますし,さらに単一臓器のみではなく,病因アレルゲンに感作された個体は複数の臓器で症状を発現しえるのであって,包括的・全身的にとらえようとする視点がまず,重要なのです.

B 生活環境中のどのアレルゲンが症状を誘発しているのか?

 上述のダニは高温多湿の環境を好みます.わが国の一般的居住環境では繁殖しやすく,最もアレルギー病態にかかわりやすいといえます.なお,室内塵(ハウスダスト)アレルギーという用語が日本国内ではい

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