疾患を疑うポイント
●全身の結合組織の慢性的な痛みや多彩な心身症状を呈する.
●FM患者の80~90%は女性で中高年期に多く発症する.
●原因不明の痛みとされることが多い.
学びのポイント
●FSSに包含される病態.
●NSAIDsなどの鎮痛薬やステロイドが無効で慢性疼痛に対する薬剤選択が必要.
●薬物治療に加え心身両面からの対応が必要.
▼定義・病態
身体の広範な部位に原因不明の慢性疼痛(wide-spread pain)と全身性のこわばりを主徴候とし,多彩な身体,神経・精神症状を伴い,臨床検査や画像検査などで説明できる異常を見出せない機能性身体症候群(functional somatic syndrome:FSS)に属する特異なリウマチ性疾患である.Sjögren(シェーグレン)症候群や関節リウマチなど種々の膠原病,脊柱管狭窄症などの整形外科疾患を基礎疾患として説明困難な全身の痛みや不定愁訴があるときは二次性FMを疑う.近年,ミクログリアの活性化など中枢神経炎症説が注目されている.
▼診断
1990年の米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)による分類基準では,3か月以上持続する全身の疼痛と全身に分布する18か所の圧痛点のうち11か所以上あればFMと診断できるとした.2010年に改訂されたACR診断予備基準では3か月以上持続する原因不明の全身19か所の広範性疼痛の程度(wide-spread pain index)と疲労,睡眠,認知機能,全身症状などの徴候重症度(symptom severity)を点数化した.一次性(原発性)FMではCRP,赤沈などの炎症所見,自己抗体などは認めず画像検査でも異常所見が得られない.
▼疫学
欧米ではリウマチ専門医を受診する患者の15%ほどがFM患者で,潜在患者も含め米国では300万人,わが国では200万