診療支援
治療

2 毛細血管拡張性運動失調症
ataxia telangiectasia(A-T)
髙木 正稔
(東京医科歯科大学大学院准教授・発生発達病態学)

疾患を疑うポイント

●歩行開始より進行する運動失調で,眼球結膜の毛細血管拡張,易感染性や免疫グロブリン値の異常を呈する患者.

▼定義

‍ ATM遺伝子の病的バリアントが,複合ヘテロ接合体になることにより発症し,運動失調毛細血管拡張免疫不全を主徴とし,高発がん性を呈する常染色体劣性遺伝性疾患.

▼病態

 病的バリアントの90%はフレームシフト,ナンセンス,スプライス異常による蛋白質発現が失われる変異で,10%に発現低下例がある.ATMはDNA二重鎖切断の修復のうえで重要な役割をもち,ATM欠損細胞は放射線に高感受性を示す.またリンパ球分化の過程で起こるT細胞受容体遺伝子の再構成,免疫グロブリン遺伝子の再構成の過程にも必要で,リンパ球の分化が障害される.小脳萎縮の病態については,DNA損傷の蓄積や,活性酸素の調節不全などが病態として考えられているが,完全には明らかにされていない.

▼疫学

 出生に対する発症頻度は1/3万~10万で,保因者は人口の0.5~1%とされる.人種,男女差はない.

▼診断

臨床所見,身体所見

 歩行開始とともに明らかになる失調症状を認める.

 眼球結膜の毛細血管拡張が6歳までに50%,8歳時で90%に出現する.

 免疫不全をさまざまな程度で認める.感染部位は呼吸器,副鼻腔,中耳などが多い.気管支拡張症を伴った慢性呼吸器感染症,誤嚥性肺炎が主な死因となる.30%の症例では明らかな免疫不全症状を認めない.

 15~30%に悪性腫瘍の発生を認め,リンパ系腫瘍の発生頻度が高い.

 男女とも原発性性腺機能不全を認める.また14%の患者で耐糖能の低下が認められ,骨粗鬆症なども報告されている.

検査

 MRIによる小脳萎縮の証明.血清IgG(IgG2),IgA,IgEの低下,T細胞数低下,CD4陽性ナイーブT細胞の比率の低下がある.末梢血フィトヘムアグルチニン(phytohemaggluti

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