診療支援
治療

2 家族性地中海熱
familial Mediterranean fever(FMF)
八角 高裕
(京都大学大学院准教授・発達小児科学)

疾患を疑うポイント

●腹痛・胸痛・関節痛などを伴う12~72時間の発熱発作を周期性に繰り返す.

●コルヒチンが有効である.

学びのポイント

●最も頻度の高い遺伝性自己炎症性疾患である.

●遺伝性疾患ではあるが,診断は臨床的基準に従うべきであり,遺伝子検査は補助的な位置づけである.

▼定義

 無菌性の漿膜炎・滑膜炎による腹痛・胸痛・関節痛などを伴う周期性発熱発作を繰り返す疾患である.責任遺伝子としてMEFVが同定されているが,臨床的基準により診断されるべき疾患である.

▼病態

 FMFはMEFV(遺伝子産物はpyrin)を責任遺伝子とする遺伝性自己炎症性疾患である.常染色体劣性遺伝疾患と考えられてきたが,遺伝子変異を認めない症例や優性遺伝形式を呈する家系も報告されている.

 pyrinは複数の因子と会合してインフラマソームを形成するが,その形成は細菌毒素によるRho GTPaseの不活化により誘導され,最終的にインターロイキン(IL)-1βの産生から炎症が惹起される.pyrinはRho GTPaseの下流に存在する分子によりリン酸化を受け不活化されているが,変異を有するpyrinではリン酸化が阻害されてpyrinインフラマソームの形成が亢進すると考えられている.pyrinは好中球や単球,樹状細胞などの細胞質内に微小管と関連して存在し,このことがコルヒチンの有効性と関連していると思われる.

▼疫学

 その名の通り地中海沿岸のユダヤ系民族に多発する.pyrinは細菌毒素によるRho GTPaseの不活化を感知して炎症を惹起することから,MEFV遺伝子に変異を有することが特定の感染症に対して優位に働いたのではないかと考えられている.わが国でも数百症例が確認されているが,非典型な症状を呈する例が多く未診断症例も多いと思われる.

▼診断

 FMFは臨床的基準により診断される疾患である.Tel-Hashomer

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