中毒とは「生体に体外から化学物質が侵入して有害な生体作用を及ぼす病態」であるから,有害物質に曝露しても体内侵入を物理的に抑止できれば中毒を阻止,軽減させることができる.ここでいう生体内部とは細胞ないし循環血液内であり,消化管の内腔は生理学的にはまだ体外に相当する.
急性中毒の発生機転には経皮,経気道などもあるが,臨床的には経口によるものが圧倒的に多いため,まず薬毒物の経口摂取時の吸収の阻害,すなわち消化管除染を考える.
▼消化管除染の方法
経口摂取された薬毒物は口腔,食道を経て胃に入り,その後十二指腸,小腸,大腸の消化管粘膜より門脈系に吸収される.このため消化管上部での吸収が非常に迅速なもの(エタノールなど),局所直接傷害作用が顕著な物質(酸,アルカリなど)では消化管除染の効果は乏しく,一方,消化管粘膜から吸収されない金属水銀,安定した金属などには消化管除染を考える必要はない.
これまで急