▼概説
酸・アルカリは工業用品として,トイレや台所洗浄剤など家庭用品として身近に存在する.中毒事例の好発年齢は,小児と成人で二峰性をとるのが特徴である.歩行や這うことが可能になる1~5歳までの小児と,自殺企図による30~40歳代の成人に多い.生体組織に接触すると化学反応により組織損傷を引き起こすが,物質により濃度,pHが異なり,損傷程度は濃度,pH,性状,粘稠度,摂取量,接触時間,さらに自殺企図の有無により影響される.
▼毒性のメカニズム
酸はH+イオンが組織と結合し,凝固壊死を起こす.固い焼痂を形成するため,拡がりは限定的とされる.アルカリはOH-イオンが蛋白融解から,上皮や粘膜下層,さらに筋層に拡がり,早期に虚血,血栓を形成し,脂肪変性,組織融解を引き起こす.深度は,組織液により中和されるまで損傷するため,長く組織にとどまり,損傷は酸と比較し強くなるとされる.消化管組織の曝露から48時間