診療支援
治療

5 フッ化水素
hydrogen fluoride
中谷 宣章
(埼玉医科大学病院・総合診療内科講師)

▼概説

 中毒ともいえるが化学熱傷といっても差し支えない.酸やアルカリ,重金属などの化学物質が皮膚粘膜に付着,接触し生じる腐食や変性など組織破壊を伴った種々の腐食現象を化学熱傷という.

▼毒性のメカニズム

 局所症状の痛みは,フッ素イオン(F-)が組織内のカルシウムと結合してフッ化カルシウムを形成するため,組織内のカルシウムイオンの欠乏が引き起こされ,細胞の膜電位が変化し神経終末からカリウムイオン(K+)が放出されることによるものである.

 全身症状の不整脈はF-が皮下に浸透してカルシウムと結合して低カルシウム血症が出現するためである.

▼中毒症状

 腐食による局所療法とF-による全身症状の両方を考える.

全身症状

 吸入した場合は目や鼻,咽頭などの刺激,呼吸苦や肺水腫,肝障害や腎障害が起こる.経口の場合は嘔吐,下痢,出血性胃腸炎,出血性肺水腫や喉頭浮腫なども起こりうる.しかし,フッ化水素は基本的に常温

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