【概要】
四肢の筋力低下・筋萎縮・感覚障害を診療する整形外科医にとって,電気生理学的検査は診断を確診に導く有意義な検査である.数ある検査法の中で,神経伝導検査(nerve conduction study;NCS)と針筋電図検査(needle electromyography;nEMG)の2つは,整形外科医のプライマリー検査と考える.これらは,整形外科疾患では絞扼性や外傷性の末梢神経障害の診断,予後予測,治療方針決定,経過観察に有用である.
NCSは,末梢神経への経皮的な電気刺激を通じその伝導性を評価する.運動神経刺激による記録電位は筋線維活動電位の総和であり(compound muscle action potential;CMAP),運動神経の大径有髄線維の伝導性,神経筋接合部の伝導性,筋線維の興奮が反映される.感覚神経刺激による記録電位は,感覚神経の大径有髄線維が発する神経活動電位の総和であり(sensory nerve action potential;SNAP),神経線維の伝導性のみが反映される.
nEMGは,筋線維の電気的活動をみている点がCMAPと共通するが,筋全体としての活動を表わすCMAPとは違い,刺入針先の周囲数mm程度を記録野とするnEMGは,筋の機能的最小単位である運動単位の活動電位(motor unit potential;MUP)をみている.
1.神経伝導検査
【1】目的と適応
NCSは①筋萎縮・筋力低下や感覚障害の原因が末梢神経にあるか否かの判断,②末梢神経の病変が脱髄か軸索変性か,および限局性か広汎(全身性疾患)かの判別を目的として行われる.NCSはすべての末梢神経に行える検査ではないが,検査できる代表的病態(神経)としては手根管症候群(正中神経),肘部管症候群(尺骨神経),腓骨神経麻痺(腓骨神経),足根管症候群(脛骨神経)が挙げられる.また,こ