診療支援
治療

神経根造影
Radiculography
出村 諭
(金沢大学附属病院 准教授)

【概説】

 神経根造影は,脊椎神経根症における障害神経根の診断および治療に用いられる検査法である.診断的意義としては,神経根の周囲に造影剤を注入し描出することにより,椎間孔内外の形態変化を把握することができる.またブロック針による疼痛再現性の確認や,その後の少量の局所麻酔薬注入による疼痛消失の確認により,責任神経根の同定に有用となる.治療的意義としては,局所麻酔薬やステロイド薬の使用によりブロック後の疼痛改善効果も期待できる.CTやMRIなどの画像診断の進歩により,椎間孔周辺の描出が容易となり,形態的な診断としての侵襲的な神経根造影の適応は減少する一方で,近年では被曝や安全性に配慮した超音波ガイド下での頚椎神経根ブロックの有用性も報告されている.

【適応】

 診断としての神経根造影の適応は,①MRIや脊髄造影などの画像所見では異常をとらえられないが,神経根由来の症状が疑われる場合,②画像所見では多椎間の異常所見を認めており,責任高位を特定できない場合,③神経学的所見と各種画像所見の責任高位に乖離がある場合などである.

 治療としての神経根ブロックの適応は,①神経根由来の疼痛が強く,内服やその他の治療で効果が認められない場合,②患者サイドから保存療法の希望がある場合や,全身状態の問題から手術療法が困難な場合などがある.一般に,神経根症状に加えて,脊髄症状や馬尾症状を有する混合型の神経障害に比べ,神経根単独の障害では,ブロック治療により症状の軽減や,効果の持続が得られやすい.


実施手順

【1】準備および注意事項

 ①特別な前処置は不要であるが,検査時のショック状態に対応できるように救急セットを準備しておく.

 ②問診でヨード過敏症の有無を確認する.

 ③抗凝固薬の服用状況を確認する.出血リスクの高い薬剤に関しては,抗凝固薬の休薬を検討する.

 ④神経根造影の際,脊髄腔への流入リスクもあるため,非イ

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