多発骨折とは2か所以上の骨折が同時に起こることをいうが,多くは高エネルギー外傷で多臓器損傷を合併しているため,初期診療としてprimary surveyを行い,生命維持のため生理機能の回復維持を優先する.その後secondary surveyにより損傷部位の評価を行って整形外科的診療に向かう.高エネルギー外傷の場合,多発骨折とともに局所の軟部組織損傷が著しいことが多く,適切な初期治療が必要となる.近年高齢者の多発骨折も多く,その基盤には骨脆弱性が存在し,骨折部位の安定化に苦慮することが多い.また小児の多発骨折にもいくつかの注意点があり,それらについて概説する.
1.高エネルギー外傷による多発骨折
交通事故や高所転落などの高エネルギー外傷では,多臓器損傷を伴った多発骨折が多い.近年early appropriate care(EAC)という概念が提唱されている.EACでは,多発外傷で大腿骨や