【概説】
集団災害とは,通常の救急医療活動の範囲を超えるような多数の傷病者が,同時に発生したときをいう.さまざまな状況で起こりうるが,一般には自然災害(natural disaster)と人為災害(human-made disaster)に大きく分けられる(表2-6図).集団災害においては,十分な医療資源がない状況で多数の傷病者に医療を提供しなければならないが,災害の種類によって求められる医療は異なる.災害現場に派遣されない医師であっても,被災患者の受け入れ要請を受けることは十分に想定され,医師はそれらについての基本的知識を学んでおく必要がある.
1.自然災害への対応
大きな自然災害が起こると,被災地域ではライフラインの損害・職員の被災に伴い,医療サービスの機能が大幅に低下すると予想される.自身の医療機関が被災地域内に位置する場合には,まず自身の安全を確保したのちに施設の被災状況を確認し,職