診療支援
治療

集団災害
Trauma management in disasters
黒住 健人
(帝京大学医学部附属病院外傷センター)

【概説】

 集団災害とは,通常の救急医療活動の範囲を超えるような多数の傷病者が,同時に発生したときをいう.さまざまな状況で起こりうるが,一般には自然災害(natural disaster)と人為災害(human-made disaster)に大きく分けられる(表2-6).集団災害においては,十分な医療資源がない状況で多数の傷病者に医療を提供しなければならないが,災害の種類によって求められる医療は異なる.災害現場に派遣されない医師であっても,被災患者の受け入れ要請を受けることは十分に想定され,医師はそれらについての基本的知識を学んでおく必要がある.


1.自然災害への対応

 大きな自然災害が起こると,被災地域ではライフラインの損害・職員の被災に伴い,医療サービスの機能が大幅に低下すると予想される.自身の医療機関が被災地域内に位置する場合には,まず自身の安全を確保したのちに施設の被災状況を確認し,職員の確保を含めてどの程度の診療がどれくらいの期間継続可能かということを判断し,自治体などに向けて発信する必要がある.診療継続不可能で,入院患者の避難などを要する場合には,その人数と緊急度を至急伝える必要がある.通常の通信手段が確保されていれば電話などの利用が可能であるが,災害時には情報が混乱することからFAXや広域災害救急医療情報システム(emergency medical information system;EMIS)を用いるほうが正確である.通常の通信手段が使えない場合などに備えて,防災無線や衛星携帯電話などを用意しておくとさらによい.いずれを用いるにしても,平時より災害訓練などを行い,その扱いに慣れておく必要がある.また,水や自家発電用の重油,薬や医療資器材などを調達するための緊急連絡先や輸送手段を確認しておくことも重要である.食糧は,現在多くの施設で整備されているように,3日分程

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