【疾患概念】
女性アスリートの3主徴である視床下部性無月経,骨粗鬆症,利用可能エネルギーの不足は,摂取エネルギーと運動強度のミスマッチであることはよく知られるようになった(図3-2図).運動性無月経の本質は,この3主徴のうちの視床下部性無月経のことである.国際オリンピック委員会(IOC)のワーキンググループは,2014年に3主徴よりさらに広い概念であるrelative energy deficiency in sport(RED-S)を提唱するようになった.RED-Sは,代謝機能,月経,骨代謝,免疫機能などがエネルギー摂取と消費のバランス不良で障害されているということを指す概念であり,女性のみならず男性においても適応される概念である.
【病型・分類】
運動性無月経においては続発性無月経となるが,続発性無月経の定義は,これまで規則的にあった月経が3か月以上停止したものをいう.3か月という期間は,単なる月経発来の遅延や希発月経との境界を設定するために設けられたものである(図3-3図).
【病態】
視床下部-下垂体系ニューロンの発育は思春期近くになると成熟が進み,黄体化ホルモン(luteinizing hormone;LH)のパルス状分泌が夜間に起こるようになる,そしてゴナドトロピンの分泌が増すようになり,次いで性腺からのエストロゲン分泌が上昇し,第2次性徴が開始するといわれている.思春期が発来する約2年前から夜間にLHパルスが発生するようになるが,LHパルスは次第に日中にも認められるようになる.日中にも認めるパルス状分泌が最終的には思春期の成熟を促進する.GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)ニューロンは律動的な分泌パターンをもつため,下垂体からのゴナドトロピン分泌も律動的である.ひとたび視床下部-下垂体-卵巣系の排卵調節系が確立すると,女性の排卵は閉経期に至るまで定期的にみられる