診療支援
治療

スポーツによる手関節・手部の外傷・障害
Sports injuries of the wrist joint and finger
瓜田 淳
(獨協医科大学 講師)

【疾患概念】

 競技種目に特有の外力および受傷機転により生じる,骨折や靱帯損傷などの外傷と,繰り返しの動作により生じる慢性障害に大別される.手関節・手部では外傷の頻度が高く,慢性障害の頻度はそれほど高くない.

 手指の外傷は,すべてのスポーツ外傷および障害のなかで最も頻度が高く,骨折,腱損傷,靱帯損傷など多岐にわたる.ボール競技での受傷が多いが,すべてのスポーツ競技で生じる可能性がある.

 慢性障害は,手関節に負担のかかる競技である,体操,剣道,ゴルフによる障害が多い.体操は,スポーツのなかでも手や腕に負担のかかる競技であり,足関節の障害に次いで手関節の障害が多いといわれている.

【病態】

(1)急性外傷

 ①槌指,マレット指:野球のように硬いボールで突き指をして生じる.伸筋腱の末節骨付着部での断裂を腱性マレット指,付着部の骨片を含む剥離骨折を骨性マレット指という(図3-12).

 ②母指MP関節尺側側副靱帯損傷(Skier's thumb):スキーストックを握ったまま転倒して,手をついたときに生じることから,この名前がついている.母指MP関節に屈曲力が働いている状態で橈側にストレスがかかり,尺側側副靱帯を損傷する.コンタクトスポーツでも生じる.

 ③母指MP関節橈側側副靱帯損傷:頻度は高くないが,転倒やコンタクトスポーツで尺側にストレスがかかったときに生じる.機能障害は生じにくいが,短母指伸筋腱付着部を含めて損傷すると,母指MP関節の伸展障害を生じることがある.

 ④深指屈筋腱皮下断裂(Jersey finger):ラグビー中にジャージを掴んだ際に,深指屈筋腱に強い屈曲力が働き,ジャージに引っ張られてDIP関節に伸展力がかかることで,腱停止部が剥離して皮下断裂する.環指に多く生じる.

 ⑤PIP関節損傷:バレーボールやバスケットボールのような大きなボールによる突き指で生じることが多い.PI

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?