診療支援
治療

慢性化膿性骨髄炎
Chronic pyogenic osteomyelitis
新倉 隆宏
(神戸大学 准教授)

【疾患概念】

 骨髄炎は,細菌をはじめ抗酸菌,真菌などの病原体が骨に感染して起こる骨の炎症および,それに伴う骨の破壊性変化である.化膿性骨髄炎とは,細菌が骨に感染して起こる化膿性炎症のことであり,このうち慢性化しているものを慢性化膿性骨髄炎という.急性化膿性骨髄炎が過去にありそれが慢性化したものが多い.感染,炎症は骨髄を中心に,骨皮質や骨膜にも及んでいることが多い.

【頻度】

 抗菌薬の発達や外傷初期治療の発展によって,発症頻度は減少してきたと考えられる.しかし近年においても,若年時に急性化膿性骨髄炎として発症し,これが慢性化した高齢者の慢性化膿性骨髄炎に遭遇することがある.開放骨折などの外傷後,また,骨折手術後に慢性化膿性骨髄炎となり,さらに骨癒合も得られていない感染性偽関節となっている症例も一定数存在する.

【臨床症状】

 総じて,急性化膿性骨髄炎に比べて症状に乏しい.発熱をはじめとする全身症状はないことが多い.限局性の熱感,腫脹,発赤,疼痛という局所症状はあっても軽微か,伴わないことも多い.瘻孔がある症例では,瘻孔からの排膿のみが症状であることが多い.排膿は持続的であることもあれば,間欠的であることもある.また,普段は無症状だが,体調を崩したときに急性転化し,急性骨髄炎に準ずる症状を呈することもある.普段抗菌薬を内服して感染を抑制して生活していた患者が,抗菌薬内服を中止した際に急性転化し,急性骨髄炎に準ずる症状を呈することもある.数か月から数年,数十年という長期にわたりこのようなことが起こりうる.

【病態】

 近年の慢性化膿性骨髄炎の多くは,外傷性骨髄炎が慢性化したものである.骨髄炎が進展すれば,膿が骨内から骨膜下に達し骨膜下膿瘍を形成する.骨髄内圧が亢進して骨の栄養動脈が閉塞すれば,骨が部分壊死して慢性化膿性骨髄炎へと移行する.成人では骨膜下膿瘍になることは少なく,膿が骨髄内にと

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