診療支援
治療

骨・関節結核および非結核性抗酸菌症
Tuberculosis of bone and joint, Nontuberculous mycobacteriosis
多田 薫
(金沢大学 助教)

【疾患概念】

 結核はかつて日本の国民病とされていたが,戦後以降の社会環境の改善と医学の進歩により罹患率は減少しており,脊椎や股関節などに発症する骨・関節結核はまれな疾患となった.

 骨・関節結核は2018年に252人が新規登録されており,全結核患者の1.6%を占めている.発生部位は脊椎が最多であり,股関節,膝関節がこれに続く.なお結核は感染症法で「二類感染症」に分類されており,診断した際は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない.この発生届を受け,保健所は医療機関と連携しながら患者への面接や治療支援,疫学調査や接触者健診などを実施している.

 非結核性抗酸菌とは結核菌と同じ抗酸菌に属する桿菌の総称であり,約170種類の菌種が登録されている.非結核性抗酸菌は結核菌が典型的な抗酸菌であるとの考えから「非定型抗酸菌」と呼称されていたが,非定型という定義が明確ではないとの理由で,現在は「非結核性抗酸菌」と呼称されている.非結核性抗酸菌はヒトを宿主とする結核菌とは異なり環境中に常在し,池や海などの水や土壌,動物などから検出される.またヒトからヒトへの感染経路は報告されておらず,感染経路は塵芥や水であると考えられている.主として肺への感染が問題となるが,非結核性抗酸菌症全体の20~30%が肺外病変であるとされ,皮膚や筋肉,骨,リンパ節などに感染する.

【臨床症状と病態】

 骨・関節結核は肺から侵入した結核菌が血行性,リンパ行性に骨・関節に到達し発生する.骨結核は脊椎,なかでも下位胸椎から腰椎にかけて発生するものが多く,脊椎カリエスとも呼称される.脊椎の病変により腰痛や脊椎の叩打痛が生じ,進行すると骨破壊から亀背となることがある.また脊椎に形成された肉芽腫が崩壊すると膿瘍となり骨外へ流出するため,殿部や大腿部に膿瘍を認めることがある.膿瘍により脊髄,馬尾が圧迫されると,下肢の知覚障害や運動障

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