診療支援
治療

化膿性脊椎炎
Pyogenic spondylitis
出村 諭
(金沢大学附属病院 准教授)

【疾患概念】

 化膿性脊椎炎は頚椎から仙椎にかけての細菌による脊椎の感染症である.その多くは血行性に椎体の上下終板を中心に感染が成立し,椎体や椎間板に病変が波及する.また後方要素の化膿性椎間関節炎なども含まれる.

 基礎疾患として,糖尿病や肝疾患,ステロイドや免疫抑制薬の使用,透析,悪性腫瘍の既往などを有することが多く,compromised hostの増加や人口の高齢化により発生数が増加している.わが国の報告では65歳以上の割合は37.5%(1988~1993年),44.4%(1994~1999年),55.5%(2000~2005年)と高齢者の割合は年々増加している.

 感染経路としては呼吸器,泌尿器感染症から血行性に波及することが多く,近年は中心静脈栄養や尿道カテーテルからの感染,椎間板穿刺,硬膜外注射に関連した医原性の感染も増加傾向である.

 起炎菌は黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌が多いが,大腸菌などの陰性菌や真菌も検出されている.またわが国では海外と比較してメチシリン耐性菌の頻度が高く,メチシリン耐性菌の占める割合は27~34%との報告もある.

【臨床症状】

 Kulowskiにより,①激しい腰背部痛や高熱,脊椎不撓性で発症する急性型,②37℃台の微熱で疼痛の訴えが軽度である亜急性型,③疼痛はあるが発熱を認めない慢性型に分類されている.

 高齢者の発生が増加傾向であるが,まれに小児発生例も報告されており,全年齢層で発生しうる.好発部位は腰椎発生例が50%以上を占めており,以下胸椎,頚椎発生の順である.

 急性型と比較して,亜急性型や慢性型は診断に苦慮することがあり,また発熱や菌血症に対する内科的治療後の二次感染巣として明らかになる場合もあり,診断に時間を要することも多い.


必要な検査とその所見

(1)組織生検,培養

 診断,治療には血液培養や椎間板生検などの組織培養を可能な限り実施し,

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