診療支援
治療

結核性脊椎炎(脊椎カリエス)
Tuberculous spondylitis
川原 範夫
(金沢医科大学 教授)

【疾患概念】

 戦後,抗結核薬により肺結核患者は急速に減少し,それに伴い新規の結核性脊椎炎患者も減少し続けている.2018年の結核の全国新規登録患者の総数は15,590人で,そのうち結核性脊椎炎は155人であった.脊椎結核155人中103人(66%)が70歳以上の高齢者である.この大半は肺結核罹患の既往があり,免疫力の低下とともに発症したと考えられる.

【臨床症状】

 肺結核と同様に微熱,倦怠感,食思不振などの全身症状を認めることがある.

 局所症状としては,罹患部位の疼痛や圧痛,叩打痛がある.脊柱の不撓性が生じることがある.骨破壊が進行すると脊柱変形(多くは後弯変形)が生じる.膿瘍を合併することが多く,炎症所見に乏しく冷膿瘍(cold abscess)とよばれる.膿瘍は腸腰筋に沿って流注膿瘍となり,腸骨窩膿瘍が有名である.また脊髄麻痺は重篤な合併症であり,Pott麻痺とよばれる.小児期に複数椎体が骨溶解のあとに治癒・癒合し,亀背を呈している成人もみられる.


問診で聞くべきこと

 肺結核の既往,周囲の結核患者の有無,疼痛部位,四肢の麻痺症状などについて聞く.


必要な検査とその所見

(1)臨床検査

 ①Tスポット®TB(T-SPOT)やクォンティフェロン®TB(QFT)など,結核菌特異抗原の刺激によって産生されるインターフェロンγ(IFN-γ)を測定・評価することでBCG接種の影響を受けずに結核菌の感染診断を行う.

 ②生検による脊椎病変の組織標本から,乾酪壊死と類上皮細胞を主体とした肉芽腫性病変を認め,Ziehl-Neelsen染色で結核菌を見いだせば結核性脊椎炎の診断が確定する.また生検組織の培養により菌集落の生育が認められ結核菌であれば,結核性脊椎炎である.通常の培養では判定までに数か月かかるので,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による結核菌の検索も行う.

(2)画像検査

 ①単純X線像:初期

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