骨髄炎治療では抗菌薬の適正使用が重要である.しかし,抗菌薬の投与量や投与期間については不明な点が多く,エビデンスも構築しにくい.さらに,バイオフィルムなどの問題もあり,その病態は非常に複雑である.高用量投与が原則であるが,わが国では認可されている投与量が不十分な場合がある.「JAID/JSC感染症治療ガイド2019」では,緑膿菌の骨髄炎治療でシプロフロキサシン薬薬の高用量投与が推奨されるなど,少しずつ動きがある.さらにブドウ球菌は骨芽細胞など細胞内に移行することがわかっており,抗菌薬の細胞内移行の問題も注目されている.移行性の高い抗菌薬を上手に使うことが重要である可能性がある.また,バイオフィルムに対してminimum biofilm eradication concentration(MBEC)という概念が提唱され,局所抗菌薬投与の重要性が再認識されつつある.わが国でもiMAP/iSAPなどの投与法が考案され注目されている.
近年グリコペプチド系以外にさまざまな抗MRSA薬が登場し,MRSA感染症に対する治療オプションが拡大した.これに伴い,MRSA感染であっても早期介入できればインプラントの温存が可能となった.しかし,骨髄炎治療で認可されている抗MRSA薬が,VCM薬だけであることは大きな問題といえる.
人工関節周囲感染は一律にインプラントを抜去するのではなく,症例によってはDAIR(debridement, antibiotics, and implant retention)や一期的再置換術が可能であることがわかってきた.長管骨の骨髄炎治療で生じた骨欠損に対して,海外では抗菌薬入りの人工骨が使用可能であり注目されている.
近年,化膿性脊椎炎,化膿性関節炎,人工関節周囲感染や開放骨折など,代表的な骨関節感染症に関するRCTが行われ,徐々にエビデンスが蓄積されてきた.
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