診療支援
治療

良性軟部腫瘍
Benign soft tissue tumor
田仲 和宏
(大分大学 准教授(整形外科・人工関節学講座))

【疾患概念】

 軟部腫瘍は,全身の軟部組織(細網内皮系,グリア,実質臓器の支持組織は除く)から生じる非上皮性腫瘍の総称である.2020年のWHO分類では亜型も含めると100種類以上におよび,組織型がきわめて多様である.また,悪性度も良性,良悪性の中間型,低悪性度から高悪性度のものまでさまざまであるため,正確な診断は容易ではない.治療にも専門的知識が必要であるため,軟部腫瘍が疑われる場合には,骨・軟部腫瘍専門医にコンサルテーションあるいは紹介することが望ましい.

【頻度】

 日本整形外科学会による2017年度全国軟部腫瘍登録によれば,わが国の良性軟部腫瘍で発生頻度の高いものは,脂肪腫,神経鞘腫,血管腫,腱鞘巨細胞腫,線維腫の順であった.


必要な検査とその所見

 軟部腫瘍の画像診断においては,単純X線検査や超音波画像検査も行われる場合があるが,MRIが最も有用性が高く必須の検査といえる.脂肪腫,神経鞘腫,血管腫などではMRIである程度の質的診断が可能である.しかし,最終的な診断確定には,生検により採取した腫瘍サンプルの病理組織学的検査が必要となる.十分な画像検査を行わず安易に切除することはunplanned excisionとよばれ,術後の組織診断で悪性と判明した場合は高率に腫瘍の遺残が認められるため,厳に慎まねばならない.


診断のポイント

 良性軟部腫瘍の診断においては悪性腫瘍との鑑別が重要となるが,疼痛の有無や腫瘍の発生部位,腫瘍サイズなどの臨床的所見に特徴的なものはなく,良悪性の判断の決め手にはならない.良性軟部腫瘍の多くは無痛性の腫瘤として自覚されるが,悪性腫瘍でも無痛性のことが多い.血管腫,神経原性腫瘍,グロムス腫瘍などでは疼痛を主訴とする場合がある.良性軟部腫瘍では長期にわたり腫瘍サイズが不変または緩徐な増大を示す場合が多いが,滑膜肉腫や類上皮肉腫など悪性腫瘍でも増大速度が遅い場

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