診療支援
治療

トピックス 悪性骨・軟部腫瘍に対する免疫療法
江森 誠人
(札幌医科大学 講師)

 悪性骨・軟部腫瘍の予後は,化学療法の導入により飛躍的に改善した.しかし進行期に対しては新規薬剤が開発されているものの,現在主に用いられている薬剤は40~50年前から使用されてきたものである.近年さらなる予後改善効果を目指して,免疫療法が盛んに臨床導入されている.これまで,悪性骨・軟部腫瘍に対してがんワクチン療法などが行われてきたが,期待できるような抗腫瘍効果は得られなかった.優れたがん抗原の同定や,がん抗原に対して長期に免疫記憶を保持できるT細胞の増幅など,精力的に研究が行われているが実用化にはまだ遠い.一方,2010年代初頭から報告された免疫チェックポイント阻害薬やT細胞の養子免疫療法は劇的な効果をもたらし,これまでのがん治療の歴史を大きく塗り替えた.悪性骨・軟部腫瘍にも多くの試験が行われている.

免疫チェックポイント阻害薬

 抗原提示・認識における重要な抑制反応にかかわる分子群は,免疫チェックポイントとして注目され,その代表がPD-1/PD-L1経路,CTLA-4経路などである.免疫チェックポイント阻害治療は,これらの抑制性経路を制御することで本来のT細胞機能を取り戻し,腫瘍を制御しようとする治療である.悪性骨・軟部腫瘍に対しても抗PD-1抗体や抗CTLA-4阻害薬を用いた試験が行われた.残念ながら骨腫瘍には効果はなく,一部の軟部腫瘍(未分化多形肉腫など)に奏効を認めるのみである.今後LAG-3など,PD-1とCTLA-4に続く免疫チェックポイント分子に対する治療法の開発が待たれる.

T細胞の養子免疫療法

 がん抗原特異的T細胞受容体(TCR)を導入した遺伝子改変T細胞(TCR-T)や,単鎖抗体断片に副刺激分子を直列につないだchimeric antigen receptor(CAR)遺伝子を導入したT細胞(CAR-T)が開発されている.悪性骨・軟部腫瘍に対しては,HLA-A

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?