1.骨系統疾患とは
骨系統疾患とは,先天的な原因によって全身の複数の骨や軟骨に変化を示す疾患の総称である.各疾患の骨・関節の形態的特徴は,骨・軟骨の発生・成長の異常に起因するものであり,原則的には複数にわたる骨・関節に共通する.最近は,次項「骨系統疾患国際命名・分類2015」で述べるように,代謝性骨疾患,異骨症,骨格系の異常を示すmalformation(形成不全)/reduction(縮小奇形)症候群も包含するものとしてとらえられている.2015年の国際分類には436疾患が含まれており,その約80%にあたる364の遺伝子との関連が明らかになっている.また,わが国では日本整形外科学会が1990年以来,学会所属施設を対象に骨系統疾患の初診患者の登録を毎年行っている.1990~2018年の総登録数は,8,786例であり,登録例数の順に骨形成不全症(1,056例),軟骨無形成症(1,039例),多発性軟骨性外骨腫症(557例)などとなっている.同期間に登録歴のある疾患は220種余りである.
骨系統疾患の診断にあたっては,病歴,臨床所見,画像所見が基本となる.さらに必要に応じて,臨床検査や遺伝子検査を追加する.画像所見においては,単純X線所見が重要な役割を果たすが,本項ではその前段階としての病歴聴取および臨床所見について述べる.
2.診断の流れ
【1】問診
①主訴:多くは,低身長,四肢・体幹の変形,関節変形や拘縮,異常可動性,易骨折性である.近年では,胎児期に超音波検査やCT検査にて四肢骨の短縮・変形などを指摘されて受診に至ることも増加している.
②家族歴:上述のように骨系統疾患の多くにおいて遺伝子変異があることが判明しており,家族歴の聴取は重要である.詳細な家系図を作成することが求められる.近親婚,自然流産,新生児死亡などの既往も聴取する.患者出生時の両親の年齢も聞き取っておく.
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