【疾患概念】
Larsen症候群とは,多発関節脱臼を主体とする疾患である.原因遺伝子は,細胞骨格の構造と活性を制御する細胞質蛋白質Filamin Bであることが解明されており,常染色体優性遺伝する.発生頻度は10万に1人程度と考えられている.
【臨床症状】
出生時に股関節,膝関節,肘関節など大関節の脱臼が多く,内反足を伴うこともある(図7-14図).顔貌は前頭部の突出,鞍鼻を伴う平坦な顔,眼間開離が特徴である.ほとんどの症例で手指末節部がへら状で,特に母指に目立つ.その他に頚椎の局所後弯で幼少期から脊髄症を生じ,早期手術を要することもある.気管喉頭軟化症もまれに合併する.
必要な検査とその所見
単純X線検査で脱臼が疑われる関節,頚椎および足部を撮影する.踵骨の二重骨化中心が特徴的だが,出生直後は骨化が未熟でわからないことも多い.頚椎の局所後弯は早期治療の対象となるため必ず確認し,適宜MRIも行う.
鑑別診断で想起すべき疾患
Desbuquois症候群,先天性多発性関節拘縮症など.
診断のポイント
出生時に反張膝や先天性内反足がある場合は,他の関節に脱臼がないか評価する.多関節脱臼,特徴的顔貌,手指の短縮があれば診断できる.
治療方針
複数関節の脱臼がみられる場合,膝関節,内反足の治療から開始するが,両者とも保存療法に抵抗性である.ギプス治療で治癒しない場合は観血的治療を行う.股関節脱臼も装具療法から開始するが,足部や膝の変形のために装着困難なこともある.その場合,観血的治療を行う.肘関節脱臼は機能的に困ることが少ないため,治療しないことが多い.頚椎の後弯は脊髄圧迫が強ければ,早期の除圧を行うこともある.
患者説明のポイント
家族には多発関節脱臼を伴う疾患で治療が必要だが,精神的発達には問題ないことを説明する.しかしながら,脱臼関節が多い場合は複数回の手術を要し,可動域制限や変形が残る場
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