【疾患概念】
小児期に,成長軟骨板や類骨にカルシウム・リンの沈着障害が生じる「くる病」のうち,腎尿細管におけるリン再吸収の異常により,尿中リン排泄が増加し,血清リン濃度が低下することを原因とするもの.遺伝性の90%以上は,PHEX遺伝子異常によるX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)である.非遺伝性のものは,FGF23(fibroblast growth factor 23)産生腫瘍による腫瘍性骨軟化症(TIO)や薬剤による尿細管機能異常である.
【症状】
ほかのくる病と違いはないが,年長児になってからX脚などの下肢変形や弯曲をきたすことは,ビタミンD欠乏性くる病では少ない.成人の無治療例や治療中断例では,腱付着部の石灰化や関節変形,疲労骨折様の偽骨折や骨痛を認める.中年以降に,後縦靱帯骨化症を合併することが多い.
問診で聞くべきこと
低身長・下肢変形などの家族歴の有無.ビタミンD欠乏性くる病との鑑別のため,日光曝露不足や極端な偏食・アレルギーがないかどうか尋ねる.
診断のポイント
単純X線ではそのほかの「くる病」と鑑別できない(図7-33図).血液検査項目では,どのくる病でもALPは異常高値(1,000IU/L以上)となるが,ビタミンD欠乏性くる病と異なり,1歳から小児期ではリン4.0mg/dL未満,intact PTH正常もしくは軽度上昇を示す.保険適応となったFGF23測定ではビタミンD欠乏性くる病と異なり30~40pg/mL以上の高値になる.ただし,25(OH)Dの摂取量が少なければ低値となることもある.
治療方針
比較的大量の活性型ビタミンDと経口リン酸製剤(ホスリボン®薬)が投与されてきたが,2019年9月から本疾患のうちFGF23関連のもの(XLHやTIO)は抗FGF23抗体ブロスマブ薬が使用できるようになった.治療は,小児内分泌専門家の手に委ねることが望ましい.治療が
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)リン酸二水素ナトリウム一水和物・無水リン酸水素二ナトリウム《ホスリボン》
- 治療薬マニュアル2023/ブロスマブ(遺伝子組換え)《クリースビータ》
- 治療薬マニュアル2024/ブロスマブ(遺伝子組換え)《クリースビータ》
- 臨床検査データブック 2023-2024/線維芽細胞増殖因子23〔FGF23〕 [保] 788点
- 今日の治療指針2023年版/くる病
- 新臨床内科学 第10版/4 亜鉛欠乏症候群(腸性肢端皮膚炎)
- 新臨床内科学 第10版/2 くる病・骨軟化症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/低ホスファターゼ症
- 新臨床内科学 第10版/(1)ビタミンD依存症,ビタミンD依存性くる病・骨軟化症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/骨軟化症,くる病
- 今日の整形外科治療指針 第8版/若年性特発性骨粗鬆症
- 今日の診断指針 第8版/低リン血症
- 今日の小児治療指針 第17版/低リン血症性くる病