診療支援
治療

進行性骨化性線維異形成症
Fibrodysplasia ossificans progressiva (FOP)
中島 康晴
(九州大学大学院 教授)

【疾患概念】

 FOPは小児期より全身の筋肉やその周囲の膜,腱,靱帯などに異所性骨化を起こす遺伝性疾患である.2006年にACVR1(ALK2)の変異であることが判明した.常染色体優性遺伝であるが,孤発例が多い.

【臨床症状】

 ①生下時より母趾の短縮と外反母趾がみられることが多い.

 ②異所性骨化は2~5歳頃より顕在化し,初発部位は頚部,背部,肩甲部であることが多く,徐々に体幹部より四肢に広がる.

 ③明らかな誘因がない場合もあるが,外傷,筋肉注射,手術などを契機にflare-upとよばれる熱感や腫脹をきたし,一部は治癒せずに異所性骨化に進行する.

 ④いったん発生した骨化は不可逆であり,全身の関節可動域制限や開口障害は徐々に進行する.


診断のポイント

 生下時より存在する母趾短縮・外反母趾が,早期診断に最も重要な所見である(図7-37a).幼児期に繰り返す頚部~背部の腫脹,頚部の可動域制限があれば本症を疑う.遺伝子検査にてACVR1の変異が同定されれば確定診断となる.


検査所見

 ①画像所見:母趾は短い基節骨をもち,中足骨の変形を伴って短縮と外反母趾を呈する.母指も中手骨の短縮をみることが多い(図7-37b).

 ②頚椎は比較的早期に骨性癒合を呈し(図7-37c),胸・腰椎は遅れて椎体間癒合や異所性骨化による骨性架橋を示す(図7-37d).

 ③遺伝子検査にて骨形成蛋白質BMP-1受容体であるACVR1の617G>Aが最も多い変異である.


専門病院へのコンサルテーション

 本症は継続的に経過を観察する必要があり,専門医へ紹介すべきである.本症は厚生労働省難治性疾患克服研究事業の対象である.詳細は進行性骨化性線維異形成症(FOP)に関する調査研究班ウェブサイトを参照いただきたい(http://fop.umin.jp/).


治療方針

 現時点で有効な治療法はない.重要なことは可及的早期に診断し,生

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