【疾患概念】
1873年のCzernyの報告が嚆矢とされているが,1877年にPagetが詳細な5例の報告を行って以来,骨Paget病(PDB)とよばれている.罹患部位で骨吸収が亢進し,それに続く過剰な骨形成により,局所で骨リモデリングの異常が生じる疾患である.その結果,罹患した骨の微細構造に変化が生じ,形態的に変形・腫大,機能的に骨強度の低下をもたらす.臨床的に病的骨折,局所の疼痛,頭痛および難聴が問題となる.その主たる原因は,破骨細胞の分化や機能の亢進による.
【頻度】
わが国の有病率は人口100万人に対し2.8人であり,欧米人と比較して少ない.好発年齢は45歳以上,好発部位は腰仙椎,大腿骨,頭蓋骨および骨盤の順に多い.
【病因】
孤発例ではウイルス感染説などが考えられているが,詳細は不明である.家族例ではRANKの機能獲得型変異(OMIM602080)が認められ,若年で発症するPDBの原因としてはOPGの機能喪失型変異(OMIM239000)が示されている.
診断のポイント
2006年に日本骨粗鬆症学会より「骨Paget病の診断と治療ガイドライン」が報告されている.特徴的な単純X線所見,高ALP血症および骨シンチグラフィーによる集積が揃うと確定診断となる.転移性骨腫瘍は必ず否定しておく.
①単純X線像やCT像では骨透明像と硬化像の混在や骨皮質の肥厚を認める(図7-43a図).また,椎骨の病変の局在は後方成分に多い(図7-43b図).線維性骨異形成が鑑別疾患として挙がるが,血液生化学的検査で鑑別可能である.
②血液生化学的検査ではALPが高値を示す.また,経過中のALPの急激な上昇は悪性転化を示唆する.高骨代謝回転を呈するため骨吸収マーカー,骨形成マーカーはともに上昇する.CaやPは正常である.
③骨シンチグラフィー(図7-43c図)では病変部に強い集積を認める.椎骨への集積