診療支援
治療

トピックス 進行性骨化性線維異形成症の治療:iPS細胞を用いた創薬研究
戸口田 淳也
(京都大学ウイルス・再生医科学研究所 教授)

 進行性骨化性線維異形成症(fibrodysplasia ossificans progressiva;FOP)は,筋,腱,靱帯といった線維性結合組織内に異所性骨が出現する,非常にまれな遺伝性疾患である.外傷,外科的侵襲,感染などの炎症を惹起するエピソードにより骨化が劇的に進行する,フレアアップと称される現象を特徴とする.2006年に原因変異が,骨形成因子(bone morphogenic protein;BMP)のⅠ型受容体の1つであるACVR1(activin receptor type-1)遺伝子の経配偶子性点突然変異であることが判明したが,詳細な発症機構は不明であり,有効な治療薬は存在していない.

 このような希少難治性疾患に対して,患者体細胞から樹立した多能性幹細胞であるiPS(induced pluripotent stem)細胞を用いて病態をin vitroで再現し,ドラッグスクリーニングを行い,治療薬の開発を目指す研究がさまざまな領域で行われている.そこで筆者らはFOP患者よりiPS細胞を樹立し,異所性骨化過程の重要な段階である,未分化間葉系細胞から軟骨細胞への分化を亢進する因子の探索を行った.その結果,BMPではなくアクチビンAがFOP由来細胞特異的に軟骨分化を促進し,かつFOPモデルマウスを用いたin vivo実験においても異所性骨を形成することが判明した.アクチビンAはTGFβシグナルを伝導する因子であるが,変異ACVR1受容体と結合するとBMPシグナルも同時に伝導して軟骨分化を促進することが判明した.その分子機構を解析したところ,アクチビンAによってmTOR(mechanistic target of rapamycin)蛋白複合体が活性されること,そしてmTOR阻害薬がアクチビンAによる軟骨分化促進および異所性骨形成を阻害することが判明した.mTOR

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?