診療支援
治療

進行性筋ジストロフィー
Progressive muscular dystrophy
石山 昭彦
(国立精神・神経医療研究センター病院 医長(小児神経科)〔東京都小平市〕)

【疾患概念】

 筋ジストロフィーは筋線維の壊死を主病変とし,進行性の筋力低下をみる遺伝性疾患である.筋線維の壊死とそれに伴う再生が慢性的に行われる過程で線維化や脂肪変性が出現し,筋量が減少することにより徐々に筋力低下が進行する.運動機能障害を主な症状とするが,関節拘縮,呼吸機能障害,心機能障害,嚥下障害,消化管症状,骨代謝異常,内分泌異常,中枢神経障害などの合併を認めることも多い.

 筋ジストロフィーの病型として,Duchenne型/Becker型筋ジストロフィー,先天性,肢帯型,顔面肩甲上腕型,Emery-Dreifuss型,筋強直性,眼咽頭型などに分類される.

【代表的な疾患】

(1)Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)

 DMDはX連鎖性劣性遺伝形式をとり,原則として男性に発症する.ジストロフィン遺伝子変異により,筋線維膜直下のジストロフィン蛋白質の欠損をきたすことにより生じる.2歳以降に転びやすい,走れないなどで気づかれるが,発症前に感冒などで行った検査で高クレアチンキナーゼ(CK)血症が判明して診断に至る例も多い.5歳頃に運動能力のピークを迎え,以降,緩徐に運動症状が進行し,10歳頃に歩行不能となる.また全身合併症として,10歳以降に呼吸不全,心筋症を認めるようになるが,出現時期や経過には個人差がある.側弯症の合併も多く,脊柱固定術の適応となる例もある.ジストロフィン遺伝子変異を有する女性を保因者とよび,その多くは無症状であるものの,筋痛,筋力低下や心筋症を発症する例もある.

(2)Becker型筋ジストロフィー(BMD)

 DMDに臨床症状は類似する一方で,発症時期がより遅く15歳を過ぎても歩行可能であるが,運動症状,重症度には症例ごとに幅がある.起立,歩行,階段昇降に支障をきたすことが初発症状のことが多い.BMDでは歩行可能な時期であっても,心筋症を発症する例がある

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