【疾患概念・臨床症状】
多発性筋炎は,自己免疫性筋障害によって進行性に体幹,四肢近位筋群,咽頭筋の筋力低下や筋痛をきたす疾患である.発熱,全身倦怠感,易疲労感,体重減少,多関節痛を認める場合がある.皮膚筋炎ではこれらの徴候に加えて顔面,手指関節伸側などに特徴的皮疹を伴う.間質性肺炎による咳嗽や進行性に呼吸障害をきたしうる.
問診で聞くべきこと
筋症状の分布や全身症状の有無,間質性肺炎を念頭に呼吸器症状について聴取する.
必要な検査
①血液検査:クレアチンキナーゼ(CK)など筋原性酵素,筋炎関連自己抗体など.
②画像検査:筋MRI(筋炎の評価),胸部単純X線・CT(間質性肺炎の評価).
診断のポイント
厚生労働省特定疾患自己免疫疾患調査研究班による多発性筋炎・皮膚筋炎の診断基準(2015年)をもとに診断する.基本的には専門医による診断・治療が望ましく,疑われた場合は膠原病・リウマチ医,または神経内科医に紹介すべきである.
治療方針
治療の中心は高用量ステロイドであり,病状に応じてステロイドパルス療法や免疫抑制薬を併用する.病状のコントロールが得られたら,ステロイドを漸減し,少量のステロイドなどによる寛解維持を目指す.
合併症と予後
筋炎自体はステロイド減量により再発しやすく,長期的な治療を要する.病状がコントロールされても筋力低下が残存してしまう症例も多い.約50%の症例で間質性肺炎を,初発患者のうち10%前後の症例で悪性腫瘍を合併し,生命予後に影響するため注意を要する.
患者説明のポイント
専門医による適切な診断,治療が必要な疾患であること,指定難病であり,医療費助成の対象であることなどを説明する必要がある.
リハビリテーションのポイント
治療急性期のリハビリテーションは負荷などに注意が必要だが,病状安定後のリハビリテーションは,筋力回復のため実施することが勧められる.
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