診療支援
治療

先天性無痛無汗症
Congenital insensitivity to pain with anhidrosis
久保田 雅也
(島田療育センター 院長〔東京都多摩市〕)

【疾患概念】

 先天性無痛無汗症(congenital insensitivity to pain with anhidrosis;CIPA)は,遺伝性感覚自律神経性ニューロパシー(hereditary sensory and autonomic neuropathy)4型(HSAN-4)に分類され,温痛覚欠如,発汗障害,知的障害を特徴とする常染色体劣性遺伝の疾患である.

【病態】

 責任遺伝子は,1番染色体に位置するチロシンキナーゼ型神経成長因子受容体遺伝子NTRK1(neurotrophic tyrosine kinase receptor type 1)であることが見出され,発生学的に神経堤から末梢神経への分化異常が生じ,無髄神経(体性C線維と自律性C線維)と小径有髄線維Aδの選択的欠損のため温痛覚および発汗障害が起こる.国内に130~210人の患者が想定されている.


診断のポイント

 乳幼児期から反復する原因不明の発熱(体温調節障害)を認め,乳歯萌芽以降の口腔内粘膜および舌や指の咬傷,熱傷や骨折などの外傷を繰り返すことで本症が疑われる.その他,角膜損傷や,下肢の関節の反復性骨折や脱臼,骨壊死によって関節破壊(Charcot関節)を認める.化膿性骨髄炎や関節炎,蜂窩織炎などの感染症の合併も多い.その他,小児期発熱による急性脳症,睡眠障害や周期性嘔吐症,知的障害や自閉症スペクトラムなどの合併もあり,自傷行為や多動を認めることも多い.特異的な検査はなく,臨床症状と発汗テストでの発汗減少で診断可能である.遺伝子検査は商業ベースでは行われていない.


鑑別診断

 無痛症,無汗症,低(無)汗性外胚葉形成不全症,末梢神経障害による無痛無汗などが挙げられる.


治療方針

 根本的な治療はなく,合併症の早期発見と治療,予防に努める.関節破壊に対する装具療法,舌・口腔粘膜外傷予防目的の歯牙への保護プレート使

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