1.高齢者が抱えるリスクとリスク管理
高齢者の特徴として,さまざまな身体機能の低下と併存疾患の存在がある.併存疾患としては,重篤な併存疾患と高頻度な併存疾患がある.重篤な併存疾患としては,心不全,心臓弁膜症,脳血管障害,肺塞栓,肺炎などがある.頻度の高い併存疾患としては,高血圧,糖尿病,慢性腎不全,認知症,不整脈,尿路感染,変形性関節症による関節の痛み,骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折などがある.高齢者では,上記の併存疾患を複数有していることが少なくないため,運動器リハビリテーション治療によって起こりうる有害事象(リスク)を把握して,リスク管理を行う必要がある.
【1】運動器リハビリテーションに関連する有害事象
有害事象が発生してしまった場合,患者,医療機関双方にさまざまな損失が発生する.具体的には,機能予後の悪化,治療満足度の低下,医療機関に対する不信感,在院日数の長期化,医療コストの増大などが発