1.概説
肩関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節であるが,その周囲には肩鎖関節,肩甲胸郭関節がその運動に参加している.したがって肩の機能障害があれば,これら3つの関節のうちどの機能が最も障害されているのかを見極める.このうち,肩甲上腕関節の機能障害が最も多いが,関節軟骨や関節包など関節自体の疾患であるか,腱板など周囲筋の疾患か,三角筋を代表とする肩甲帯周囲筋への末梢神経障害かも見極める.末梢神経障害では,頚椎由来か,末梢神経由来かを見極める必要がある.情報の収集漏れがないように留意しつつ,問診,視診,触診と診察を進める.
2.問診
肩の症状は,大きく疼痛に由来する症状か,機能障害や運動障害に由来する症候かに分けられる.そして,それらは同時に出現することも多くある.疼痛については,その部位,その誘発や程度,出現時間も診断に必要な情報である.疼痛性の運動障害で夜間の痛みが強い場合は腱板断裂や肩関