【概説】
肩関節(肩甲骨上腕関節)の痛みには,大きく2つの病態がある.1つは炎症や神経障害などによる,安静時痛あるいは夜間痛である.もう1つは腱板断裂や凍結肩に代表される,関節拘縮に伴う運動時痛である.よって,疼痛が安静時痛なのか,運動時痛なのか,あるいはその両者を伴うのか把握する必要がある.また痛みの発生部位,圧痛の有無について触診を併用しながら評価し,運動時痛であれば,外転挙上時や,内旋時の痛みなのか,インピンジメント徴候があるかどうか,最終可動域での痛みの有無について詳細に観察・評価し,疼痛の誘因を判断する.そして原因に応じた,適切な疼痛コントロール法を選択することで,確実な除痛を得ることができる.しかし,急性期には疼痛の原因が明確であっても,症状が慢性化すると肩周囲組織の機能障害をきたす結果,その病態が複雑化し,症状の多様化,治療経過による変化が生じる.そこで,治療にあたっては常に