診療支援
治療

胸鎖関節部の疾患と外傷
Pathology and injury in the sternoclavicular joint
三幡 輝久
(大阪医科薬科大学 准教授)

【疾患の概念】

 胸鎖関節とは胸骨と鎖骨の連結部であり,肩鎖関節と肩甲上腕関節とともに肩関節を形成する.胸鎖関節は他の関節に比べてそれほど大きな可動域を有しないが,胸鎖関節の動きが少しでも制限されると肩関節の可動域が大きく減少するため,日常生活や仕事,スポーツに支障をきたすことが少なくない.

【病態】

(1)胸鎖関節脱臼

 胸鎖関節は関節包,胸鎖靱帯,鎖骨間靱帯,関節円板靱帯および肋鎖靱帯によって強固に制動されているため,脱臼することはまれである.しかし交通外傷やコンタクトスポーツなどにより,かなり大きな負荷が加わると脱臼することがある.loose shoulderの患者においては,外傷なく脱臼することがある.

(2)鎖骨近位端骨折,胸骨骨折

 転倒などにより胸鎖関節に大きな負荷が加わったときに起きる骨折である.

(3)胸鎖関節炎

 掌蹠膿疱症や感染などにより起こる.

(4)変形性胸鎖関節症

 加齢性変化によって起こることが多い.


問診で聞くべきこと

 外傷の有無,痛みの部位,既往症と合併症.


必要な検査とその所見

(1)単純X線

 ほとんどの骨折は診断可能であるが,胸鎖関節脱臼の評価は容易ではない.

(2)CT

 胸鎖関節におけるほとんどすべての病態を評価できる有用な検査である.さらに多くの情報を得るためには三次元構築することが望ましい.胸鎖関節脱臼であれば脱臼の方向(前方脱臼あるいは後方脱臼)まで評価できるが,下垂位では脱臼が整復されていることもあり,脱臼肢位を確認したうえで撮影することが望ましい.

(3)MRI

 胸鎖関節に炎症を認める場合には,T2強調像において関節内に高輝度変化を認める.

(4)血液検査

 感染が疑われる場合には必ず行う.


診断のポイント

①まずは単純X線により骨折の有無を確認する.外傷後に圧痛を認める部位には骨折線を認めることが少なくない.骨折線が認められない場合には,CTやMRIにより他の

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