診療支援
治療

胸郭出口症候群
Thoracic outlet syndrome
岩堀 裕介
(あさひ病院スポーツ医学・関節センター センター長〔愛知県春日井市〕)

【疾患概念】

 胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome;TOS)は,主に斜角筋三角部,肋鎖間隙,小胸筋腱下部において腕神経叢や鎖骨下動・静脈が圧迫・牽引ストレスを受け,頚部から上肢の疼痛,しびれなどの症状を生じる疾患群である.このTOSという名称は,それまでに報告されていた頚肋症候群,前斜角筋症候群,肋鎖症候群,過外転症候群の総称として,1956年にPeetらが命名した.TOSは症状が多彩で診断基準も曖昧なことや,併存病変の影に隠れて見逃されている場合が少なくない.発症要因は,非外傷性,外傷性,その中間である微小外傷の繰り返しや持続がある.非外傷性は,頚肋・第1-2肋骨癒合症などの胸郭形態異常や,異常線維束・最小斜角筋などの先天性解剖学的異常や破格,腫瘍,なで肩や姿勢不良などにより生じる.外傷性は胸郭出口への直達外力,鎖骨骨折,むち打ち損傷などがある.微小外傷の繰り返し・持続にはオーバーヘッドスポーツ,上肢のウエイトトレーニング,肉体労働,リュックサックなどがある.病型としては,血管性(動脈性,静脈性),神経性(true,disputed),混合性があるが,大部分がdisputed typeの神経性TOSか混合型であり,血管性は少なくtrue typeの神経性TOSはまれである.静脈性TOSのうち血栓によるものはPaget-Schroetter症候群とよばれる.神経性TOSはその要因によりさらに圧迫型,牽引型,混合型に分類され,圧迫型は筋肉質の男性,牽引型はなで肩の女性に多くみられるが,混合型が最も頻度が高いと報告されている.

【臨床症状】

 TOSの自覚症状は上肢のしびれが最も多いが,そのほか頚部・肩甲部・肩から手部の疼痛,頑固な肩こり,上肢の脱力・握力低下なども多い.第1肋骨側を走行するC8・T1神経の障害が強く出る傾向があるため,しびれや知覚障害は

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