診療支援
治療

石灰沈着性腱板炎・滑液包炎
Calcific tendinitis, bursitis
高瀬 勝己
(東京医科大学 教授(運動機能再建外科学寄附講座))

【疾患概念】

 石灰沈着性腱板炎は,腱板周囲(腱板,滑液包,腱鞘滑膜など)に石灰(アパタイト結晶)が沈着することにより肩関節に発症する炎症性疾患であり,疼痛および運動時痛を主訴として日常診療によく遭遇する疾患である.

 石灰沈着の発生メカニズムは,いままでに明らかにされていない.一般的に,腱板の加齢および腱板への反復する力学的負荷により引き起こされた,退行変性と血行不良により腱実質細胞が軟骨細胞に分化し,同細胞からアパタイト結晶が形成されると考えられている.この石灰物質が腱板内から肩峰下滑液包内に放出されることにより,滑液包の急性炎症を引き起こす.また,腱板内に石灰沈着が限局した場合では,石灰物質の機械的刺激により,腱板と肩峰下面部との衝突が起こり,肩峰下滑液包炎を引き起こす.

【臨床症状】

 臨床症状は程度と経過により3型に分類される.

 ①急性期:肩関節の激痛が急性発症し,他動的に動かすことも困難な状況となる.他覚的には石灰沈着部と思われる部位に限局した圧痛を認めることができるが,時には同部を中心に発赤,腫脹,熱感を伴う症例もある.アパタイト結晶が腱板内から滑液包内に急速に流出され,滑液包の急性炎症を引き起こす病態と考えられる.

 ②亜急性期:軽度の肩関節痛を自覚していたが,時に疼痛が増強する.

 ③慢性期:3~6か月以上軽度の疼痛が持続するが,症状の増悪を伴わない.肩関節運動時に石灰沈着部が肩峰下面部に衝突し,肩峰下滑液包炎を発症する病態と考えられる.


画像検査

 診断は単純X線検査にて容易に可能である.しかし,一方向のみでは石灰化を見逃す可能性があるため,少なくとも肩関節前後像およびScapula-Y撮影の2方向以上は必要である.X線にて描出される石灰沈着は,大きさや形状はさまざまである.濃淡が均一で境界鮮明なチョーク型,濃淡および境界が不均衡となるタイプ,濃淡および境界がさらに不均

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