【疾患概念】
肩甲骨は胸郭上での可動性が大きく厚い筋層で囲まれ,大きな外力が直接作用し難いため,骨折が生じることはまれである.このことは裏を返せば,肩甲骨骨折発生時には相当大きな外力が作用したことを意味しており,多数の合併損傷が認められるのが本骨折の特徴である.
【頻度】
全肩甲帯部骨折の約3~5%,全骨折の0.4~1%である.
【病型・分類】
解剖学的に体部骨折・頚部骨折・肩峰骨折・肩甲棘骨折・烏口突起骨折・関節窩骨折に分類され,関節窩骨折にはIdeberg分類が頻用されている.
【臨床症状】
骨折部は圧痛を有するが,腫脹は厚い筋層に覆われ判然としないことが多い.頚部骨折や肩峰骨折では肩幅が狭くなり「なで肩」となる.体部骨折では筋肉内出血により腱板の機能が低下し,あたかも腱板断裂時のように上肢の自動挙上ができなくなる.これは“pseudorupture of the rotator cuff”